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Level Infiniteとグローバルゲーム市場

「GamesBeat Summit 2022」にてグローバルCEOミシェル・リウが語る、テンセントの戦略と成長

アンドレア・ルネ(以下AR):こんにちは。私はビデオゲームメディア「What’s Good Games」共同創業者のアンドレア・ルネ。今日は「GamesBeat Summit 2022」に戻ってこれてうれしい。光栄なことに、今回私が話を聞くのはゲーム業界で最もパワフルに活躍している女性の一人で、多忙過ぎて普段は滅多にお話なんてできない方よ。皆さん、Tencent GamesグローバルCEOのミシェル・リウ氏に大きな拍手を。ミシェル、今日はお会いできて光栄よ。調子はどう? 中国では最近どうかしら?

ミシェル・リウ(以下ML):ありがとう、アンドレア。私の経歴は実はすごくシンプルよ。私はゲーム業界の古参で、この分野で働いて20年以上になるわ。テンセントに入ったのは2013年の終わりだったから、ここでのキャリアは8年以上ということになるわね。グローバル部門に移る前はモバイルゲームの担当をしていて、2019年にグローバルゲームビジネスを率いることになったの。

AR:グローバルゲームに携わるテンセントのイメージでは、近頃はかなり大規模な範囲を手掛けているように感じるわ。グローバルゲーム市場において、Tencent Gamesはどんなビジョンを掲げているの? そして提携先と達成したい目標は何?

ML:良い質問ね。私たちのグローバルゲームビジネスのビジョンは開発と販売の機能を一本かつ密に結び付けて、ゲームと開発、そして販売のシステムを統合したグローバル規模のエコシステムを作ることよ。

そのようなエコシステムがあればローカルユーザーをより深く理解して、ゲームのコンテンツとユーザーをより良くつなげられるようになると考えているわ。もちろん、私たちはさらに高品質のゲームを作ることができる。それからユーザーの要望を理解して新しいテクノロジーを研究した上で、デベロッパーだけでなくユーザーとも協働して新しいゲーム体験の可能性を研究しているわ。長い目で見た時に、ゲームは世の中、ひいては人々の命にエネルギーと楽しさを与えるものだと信じているから、今後もゲームがいかに世界により意味あるものを生み出していけるのか、まだまだ探求する余地があると思う。

AR:どれも詳しく聞きたいわ。なぜならテンセントがグローバル市場において本当に巨大な存在ということは明らかで、提携しているデベロッパーたちの種類も多種多様だから。先程、以前はモバイルゲームの担当だったと教えてくれたけど、モバイルゲームは業界内で大きな地位を占めるようになってきたわね。だけど、それと同時に、新世代のコンソールも新たなテクノロジーのあり方を提示したのではないかと思っているの。それぞれ異なるパブリッシャーと仕事をしてきた身として、デベロッパーは何か特定のプラットフォームに偏ってきていると思う? それとも全体的に交ざりあっているのかしら?

ML:そうね、私たちは世界各地のデベロッパーたちとおおむね良い関係を築いてきているわ。我々のコラボレーションモデルは、パートナーであるスタジオの成長目標を達成するために我々はそのサポートに回る、というものなの。だから株主にはスタジオに対して長期的なビジョンを持ってもらうことに重きを置いているし、スタジオには必要なリソースやクリエーションの自主性を与えて、彼ら自身の目標達成を目指してもらっている。

一つ一つのスタジオが独自の歴史と開発文化を持っているから、私たちは万能モデルのようなものを使わず、各スタジオに合わせたコラボレーション方法を取ってスタジオを守りたい。だからこそテンセントは、RiotやSupercell、Epicといった会社との提携において成功できたと考えているわ。自発的に成功に向かっていったとも言えると思う。これらの会社のコアチームは、それぞれ新しいIPのローンチやチームの拡大、新しいテクノロジーの構築など、自分たちが叶えたいことを明確に理解しているの。テンセントの役割は、こちらが持つリソースと専門知識を提供して、それらの実現のサポートをすることよ。

AR:外部から見ている大勢の人は、テンセントは様々なゲーム会社に多額の投資をしているただの巨大企業だと思っていることもあると思う。でも今言っていたように、実際のテンセントはもっと実践的で、パートナー会社と密接に関わり、相手の要望に合わせて個別に対応しようともしていたのね。

すごく気になるのが、テンセントほどのグローバルな大企業であれば、その他の多くのゲーム会社にはない専門知識があるはずよね。このグローバル市場において、テンセントの持つ専門性はどのような形で提携先を援助しているの?

ML:それに関して言うと、密接に協働している多くのスタジオが、今は新世代のゲームとIPを作ろうと意気込んでいるわ。それらは彼らが過去に作ったどのゲームよりも拡張されて没入型のものよ。だからテンセント側としては、それを叶えられるように様々なリソースや能力を提供しているわ。

まず挙げられるのは、テンセントの中国市場での成功はモバイルゲームの開発とオペレーションの専門知識に依るところが大きかった、ということ。そしてさらに市場にモバイルゲームを提供するため、近年では最高レベルのグローバルIPたちと提携したわ。今後ゲームがよりクロスプラットフォーム化していくことを踏まえると、テンセントはこの分野でアシストできると思っている。

その次に、ライブサービスのタイトルを作りたいスタジオに対しては、テンセントの社内には専門家がいるので、ライブオペレーション計画の作成や、コンテンツ制作の要望や収益化モデル等の評価に関しては経験知を持っているわ。これは、時として十年単位で築いた長年の経験が生きていて、ものによってはGaaSモデルを通した経験でもある。そしてもちろん、スタジオやデベロッパーだけでは苦戦することの多いエリアマーケティングや販売イニシアチブに関しても、テンセントのグローバル展開力を活用することができるわ。

具体的な例を挙げると、GGG (Grinding Gear Games)が開発した『Path of Exile』の時は、インフルエンサーとのコラボやPR、コミュニティのリソースを使って北米市場のマーケティングを増大させたの。プレイヤーを母体とする形で、GGGが今まで到達しなかったことをサポートすることができた。そして最後に技術面で言うと、我々は、ITストラクチャやデータ分析ソリューション等の技術サポートやソリューションをスタジオに提供できる。今はFuncomの『Conan Exiles』と関わっているんだけど、データ分析を通してプレイヤーの行動を解析して、現状のオペレーションを改善しようとしているところよ。

AR:テンセントがやっていることは多岐に及んでいて、関わっていない分野は存在しないぐらいね。ゲーム業界で行われてきたそれぞれの会社の買収の背景はとても興味深いと思う。あなたはスタジオの買収だけでなく、様々な方法でテンセントがパートナーを援助してきたということを説明してくれたわね。今後もテンセントは他のパブリッシャーやゲームメーカーたちと提携を続けていくと思う? それとも社内にもっとスタジオを構えるようなるかしら?

ML:もちろん、これからもオープンな精神で世界中の優秀な開発者たちと手を組んでいくつもりよ。それが私たちの確立したいことだから。世界中にプロダクションのシステムを構築したい。テンセントは自分たちが得意なことを基盤に動いて優れたパートナーたちと積極的に協働し、より良いエコシステムを作って今後もゲーム業界の新たな可能性を探求していきたいわね。

AR:グローバルビジネスとして、テンセントがゲーム業界で携わっていない分野は存在しないようね。だけど、ビジネスの面から見て、テンセントがこれから力を入れていきたいテクノロジーや有望なイノベーション、特定のジャンルやゲームのタイプはある? 例えばARやVR、インタラクティブ・トイ (Toys to Life) など、ビジネス的にテンセントが目をつけている何か特定のカテゴリーはあるかしら。

ML:ええ、それは良い話題ね。今年のGDC (Game Developers Conference) でテンセントのAIラボが発表したものの一つが、AI技術をプレイヤーの教育とゲームレベルの生成に使用するというものだったの。AIがゲーム体験だけでなく、生産の能率も向上させることを証明したわ。

新しいテクノロジーと合わせればテンセントが探求できる幅は広がる。でもそれと同時に、私たちの側にもパートナーを支える強みが沢山あると自負しているわ。現在、テンセントはGaaSやライブオペレーション、eスポーツといった分野を中心に高い専門性を持っていて、他社と十分に協働できる状態にある。この分野を通して、今後もっとクロスプラットフォームなゲーム制作や販売エリアの拡大を目指していけると思っているわ。

AR:クロスプラットフォームについては個人的にもすごく楽しみ。沢山のゲーマーにも待ち望まれているはずよ。だけど、スタジオの中にはクロスプラットフォーム化に苦労しているところもあるようで。今後もっと一般的になるかしら? それともクロスプラットフォームでないオンラインゲームの場は残り続けると思う?

ML:時代の方向は間違いなくクロスプラットフォームね。今、私たちは過去タイトルのクロスプラットフォーム化を計画しているし、何よりプレイヤーがもっと自由に遊べるようになることが一番だと思う。

プラットフォームによってプレイヤーが制限されることがなくなり、ユーザーが自由に楽しめるコンテンツを提供できるようになることが正しい道だと考えているわ。我々はこの道を模索していけると思っているし、PCゲームやコンソールに強い会社と、モバイル分野に強い会社をそれぞれパートナーシップの中でつなげていきたい。どちらの会社にもそれぞれの良さがあるので、必要なのは、互いの長所を活用しあってクロスプラットフォーム化を目指すことよ。

AR:それは楽しみだわ。これを聴いている多くの人もきっと大歓迎よ。それと、先程あなたが話していた、GGGと実施した北米でのキャンペーンにインフルエンサーを起用した件について触れたいのだけど。私自身メディアの仕事をしている身として、近年パブリッシャーやデベロッパーたちがマーケティングのために様々な種類のキャンペーンを展開していることに魅力を感じているの。なぜならグローバル規模でのマーケティングは非常に多種多様だから。

あなたのところのパブリッシャーやテンセントの社内キャンペーンの方向性として、今、一本化されていると感じる? ゲームを売る際に昔ながらの広告枠の購入を中心としているのか、それとも最近はインフルエンサーを起用したり、YouTubeやTwitch、Tik-Tok等で配信したり、その他ソーシャルメディアを使ってもっと大衆的なキャンペーンに予算を割くようになっているのかしら。

ML:ゲーム業界は常に進化する業界よ。ユーザーも変われば製品のコンテンツも変わり、そうね、ゲームというメディア自体も変わりつつある。だからこれは新しいモデルを見つけて、新たな仕組みに挑戦する良いチャンスだと思っているわ。インフルエンサーや配信だけに限らずね。

私たちは沢山の変化に対処しなければならない。私個人の視点で見ると、テンセントはグローバルビジネスを展開するにあたって多くのシステムの再構築を行っているわ。現在、私たちは地域に常駐して現地で働くチームを作っていて、今年は完全に機能するローカルパブリッシングチームを12箇所に立ち上げるところよ。それぞれのローカル市場の販売を取り仕切る、地域のパブリッシャーも就任するわ。

つまり、私たちはローカルユーザーにより目を向けていて、彼らの必要としていることや要望に注目しているの。要望に加えて、製品にアクセスする際にどんなメディアを通してきたのかということなどもね。その面で言うと、eスポーツも新しいと考えているわ。マーケティング経路としてだけじゃなく、ユーザーに新しいクリエイティブなコンテンツを生み出すものだと思う。

その一方で、テンセントは本社に中枢管理機能を構築していて、地域のチームにサービス力の面でいくつものサポートを行っているわ。そうすることで、より良いオペレーティングシステムを作れるし、ユーザーにも満足いくメディアと販路を提供して、製品とゲームの内容をよりダイレクトかつ自由に知ってもらえる。

AR:今、あなたの言っていた、地域ごとの拠点についてもっと聞かせて。パンデミックはそういったチームの形成や運営に支障をきたした? むしろ、それらの拠点は、よりローカルでローカライズされたコミュニティの中でモバイル化を進めた結果の副産物と呼べるのかしら?

ML:パンデミックに関して言うと、以前から動いていた地域チームでは新たな障害や現地での問題が起きたわ。だけど、私たちには新製品やローンチすべき新作のゲームが沢山あるし、現地のチームはパンデミック下で苦労している。でもそれと同時に、彼らはリソースを増強して本社のサポートも受けながら向上のために努力しているわ。

先日、テンセントは『PUBG MOBILE』のローカルトーナメントを開いたんだけど、ユーザーたちから良いフィードバックを受け取ったわ。パンデミック期間に行うのは簡単なことではないけれど、eスポーツや地域でのリアルなイベントに関しては新たなアプローチを取って、オンラインで実施することもできる。トーナメントに参加するオンラインユーザーは今後も集めていきたいし、沢山の可能性があると思う。まだまだ私たちにとっては良い機会だと思うわ。

AR:eスポーツについてテンセントは確実に世界的に大きな存在感を放っているし、また改めて詳しく聞きたいところね。だけど今回は、私がとても興味あることについて教えて。つまり、それはあなた自身についてよ。女性がCEOの地位に就くことはとても稀有なこと。だから今日あなたの話を聞けるのは、またとないチャンスだと思うの。

あなたは仕事の上でも沢山の責務を負っているけれど、人生の責務ということで言えば母親でもあるわ。私は去年、母親になったところなんだけど、仕事とのバランスを取ることは本当に大変よ。多忙なCEOのあなたには、何かコツがあるんじゃないかしら。何かアドバイスをもらえない?

ML:それはおめでとう、アンドレア! その質問はよく聞かれるの。実を言うと私もずっと同じ問題に直面してきていて、常に考えなきゃいけないと思っているわ。仕事と家庭のバランスは子を持つ男女誰もが苦労することだと思う。伝えられることがあるとしたら、何個かあるわ。

まず第一に、一緒に過ごして愛情を伝えること。どんなに忙しくても子供と一緒の時間を作って。子供の成長に伴って一緒に過ごす時間の長さは変わるかもしれないけど、子供と家族にとって一番大切な瞬間に一緒にいられるようにすれば、お互いに愛情を感じていられるはず。

次に、子供のことを理解して支えてあげるようにすること。あなたや私はゲーム業界にいるから、若い世代の願望を知る機会は他よりも多いわね。子供の隣に座って、関心を持って、意見を交換することは大切よ。子供を管理するより、友達のように接する方がずっとポジティブだからね。そしてどんな子にもユニークな才能と可能性があると思う。だから信頼して、その子の性格と長所を尊重して、子供のやることを親が決めるんじゃなく、子供のやりたいことや決断をサポートしてあげるのが良いと思うわ。

そして最後は、母親と父親同士で沢山コミュニケーションを取ることね。皆、忙しいだろうけど、お互いを理解して支え合うように努力して。家庭の雰囲気が良ければ、必ず子供もより良く育つはずよ。

AR:その通りね。家族のことに目を向けることの大切さを思い出したわ。この仕事をしていると、時々家庭がないがしろになってしまうことがあるから……。ちなみに、あなたは子供たちとゲームをプレイすることはある?

ML:もちろんあるわよ。時々Nintendo Switchやオンラインゲームで遊んでいたの。でも、もう子供たちも10代後半になって私とよりも友達と遊ぶようになってしまってね。だからもういつも一緒にゲームするという感じではないけれど、ゲームは家族で過ごす良い機会になると思っているわ。

AR:お母さんがゲームの仕事をしているなんて、子供たちにとってはすごくクールなことでしょうね。あなたの子供たちはやっぱりそう思っている? それとも大きなオタクみたいに思っているかしら? 私の子供たちは将来絶対にそう言うようになると思うの。

ML:子供たちは良い印象を持っていると思うわ。いつも何かしらの話題を出して、子供たちの友達にも意見を聞いたり話したりしているから。

AR:それはクールなお母さんになれるわね! そろそろ今日は終わりの時間なんだけど、最後に教えて。Tencent Gamesがグローバルビジネスとしてこれから向かう先、目指す先は何か、あなたが皆に伝えたいことはある?

ML:テンセントはグローバルビジネスのスタート地点に立ったばかり。だから私たちはまだまだ学びの途中で、じっくり考えながら、あらゆることを明確に、より良くしようとしている最中よ。長期的に見て、私たちは業界とユーザーにもっと元気を与えたい。そしてゲーム業界は大きな可能性を秘めている素晴らしい業界だと確信しているわ。多くのテクノロジー、革命、そして新しい境界線に辿り着けると信じている。

それこそが私たちがこの業界で目指していることね。だからこそ、我々はデベロッパーやユーザーの探求を行い、ゲーム業界をより意味深いものにできるものを探しているのよ。

AR:パートナーとの協働関係や社内スタジオの中で、テンセントが積極的に活躍してゲームというメディアを発展させていることが知れてとても良かったわ。今度どんな新しい大きなイノベーションが現れるのか、提携相手だけでなくプレイヤーやコミュニティをグローバルに限らないローカルな規模で支えていく形とは何か、注目していたいと思う。ミシェル、今日は「GamesBeat Summit」で話を聞かせてくれて本当にありがとう。あなたの幸運を願っているわ。次に子供たちと遊ぶゲームも楽しんでね。

ML:ありがとう、アンドレア。呼んでくれたことに感謝するわ。とても良い時間だった、また会いましょうね!

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