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持続可能なeスポーツはおとぎ話ではない―『PUBG MOBILE』の挑戦

eスポーツ界はまだ萌芽期の段階とみなされているが、その中でいち早く業界の未来のあるべき姿を実現しようとしている先駆者たちがいるのも確かだ。特にバトルロイヤルゲームPUBG MOBILEは、さまざまな相乗要素によって、プレイヤーはもちろんパートナーや業界全体を巻き込んだ展開を行っているという点で、ひときわ輝きを放っている。

このように強靱で持続可能なエコシステムの構築は終わりのない道のりであり、どの過程をとっても重要な教訓を学ぶことができる。『PUBG MOBILE』のマッチでは時間経過とともにセーフゾーンが縮小し、プレイヤーはそれに応じて生き残る策を考え出さねばならない。このゲームのeスポーツ部門も同様に、状況の変化に即応すべく絶えず自らの在り方を見直している。

Gamescom Asia 2023において、Level Infiniteの東南アジアパブリッシング統括担当、Oliver Yeは、このゲームが持続可能なeスポーツエコシステムをどう醸成したのか、その過程でどのような試練や困難に遭遇したのかを語った。

Yeが特に強調したのは、eスポーツにおいてファンとプロ選手、そしてゲーム体験をつなぐ要はストーリーテリングであり、良いストーリーを作るには適切なステージ、ファンが共感できるスター、そして訴求力のあるスクリプトが必要になるという点だ。

『PUBG MOBILE』におけるステージは「3つのP」から構成される。ポテンス(Potence)、ピラミッド(Pyramid)、そしてパートナー(Partners)だ。

ポテンスとは製品が持つ「強い基盤」。これはeスポーツをサポートし、長期にわたり安定して質の高いサービスを維持できるよう労力を注ぎ込むことによって生まれる。そしてピラミッドとは競技シーン構築にあたってめざすべき構造だ。地元の関心から国際的な名声へと段階的に上昇していくような造りにしなければならない。

「弊社は『PUBG MOBILE』ローンチ後、まず東南アジア諸国で各地の草の根eスポーツシーンに関心を集めるところから始め、そこから何年もかけて徐々に方向付けをしていく形でPUBG MOBILE Esportsという競技舞台を築きあげていきました。このピラミッドがなぜ大成功したのかというと、地方から勝ち上がり国際大会へと進出するという構造で盛り上がるからです。プレイヤーは自分が世界で一番だということを証明したいのです。」とYeは説明した。「弊社はその後も取り組みを続け、世界各地からスター選手を集めてPUBG MOBILE GLOBAL CHAMPIONSHIPを立ち上げました。」

さらに地方トーナメント強化のためPUBG MOBILE Super Leagueが立ち上げられ、プレイヤーが競技シーンのどこにいようとも脚光を浴びる機会をあたえられるようにした。 最後に、パートナーは適切に選ぶことで世界に多様性を生み出すことができる。「適切なステークホルダーを見つけ、提携し、そこに投資すること」には大きな効果がある。単にeスポーツコンテンツを消費してもらえるチャネルが増えるというだけでない。同じ理念と価値観をもつパートナーを増やし、ファンベースを拡大することにもつながる。

「私たちは適切なピラミッド構造と競争の方向づけによって、東南アジア諸国の大半を一つのバトルロイヤルゲームの競技圏に取り込むことができました。すべてをひとところに集めて、世界の強豪と戦うに足る資質を持っている人を見つけ出そうというわけです。これをサポートするため、東南アジア諸国の10以上の異業界のリーダーたちとも密に連携しています。」

eスポーツに可能性を見いだす業界が増えれば、やがて伝統的なスポンサーシップの時代は過去のものとなり、可能性はさらに広がるだろう。

この動きはシーンの中心にいる人々、つまりプレイヤーによっても加速される。プレイヤーやチームがエコシステム内で適切な支援や配慮を受けて成長できることは、資質を持った人がスターとなって現れる道を整備するという点で、あらゆる方面に有益なことである。

Yeが例として挙げたのは、インドネシアのベテラン選手であるZuxxyだ。彼は「ピラミッドの底辺から勝ち上がり、今なお現役で世界のトップステージや国際大会で戦い続け、各国でMVPやチャンピオンシップを獲得している」プレイヤーであり、追いかければいつか彼のようになれるかもしれないという道を人々に示している。『PUBG MOBILE』のeスポーツエコシステムはもはや単なるゲームを超え、スターを生み出す土壌となっているのだ。 さらに、そこでストーリーを語り、エンゲージメントやディスカッションを促し、eスポーツ界内外の注目を集めようとすると、地域コミュニティとのつながりが重要になってくる。

「いまどんな話題が盛り上がり、何をめぐって議論が起きているのかを知ってこそ、ファンへ効果的に働きかけ、有益なコンテンツを発信し、PUBG MOBILE Esportsを飾ってきた数々の名場面を回想してもらうことができます」とYeは語った。

つまり、バイラル化したミーム、盛り上がっているトピック、あるいは白熱した競争意識といったものを土台に盛り上げていくわけだ。そこにはリスクも伴うが、「そうした議論を運営側が主導するかたちでもっと健全で興味深い方向へと導いていくことも重要です。」とYeは主張している。世界各地のローカルチームと何百人ものスタッフの存在が、そのような事態を予期し、対応し、フル活用することを可能にしている。

もちろんそれはたやすいことではないが、Yeとそのチームにとっては価値ある努力であり、これからもますます重要性を増していくことになるだろう。eスポーツの「ドン勝」をめぐる競争が史上最高にホットな今は、味わってみるのに絶好のチャンスといえる。

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