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ゲームの未来はメタバースに留まらない。時代は「ハイパーデジタルリアルティ」へ

ビデオゲームがアーケードでポンをプレイしたり、8ビットのホームコンソールを起動してブロック状のスペースインベーダーを撃ったりすることを意味するのはそれほど昔のことではありません。

今や3Dグラフィックスのゲームを4K解像度でPlaystation®5やXbox Series X、最新のスマートフォンを使ってプレイしています。さらにハードウェアのスペック向上と新しいコンテンツの開発に伴い、VRヘッドセットで360度の仮想世界に入り込むことも増えています。

ゲームは娯楽です。媒体がカードやボードであろうと、あるいはスマートフォン、PC、ゲーム機、さらにはヘッドセットであろうとも、それは変わりません。しかしゲームの世界がアナログからデジタルへ、リアルからバーチャルへ移行するにつれ、おかしなことが起きました。地球上の人々が未だかつてないほど繋がり合うようになったのです。その規模を実感していただくために、ひとつの例を挙げましょう。テンセントゲームズが『PUBGモバイル』を2018年に発売して以来、ダウンロード数は実に10億を超えます。これは地球上の人々のおよそ7.7人に1人が同じゲームをダウンロードし、携帯電話を使って一緒にプレイしている計算になります。

そして毎日イギリスやアメリカ、ブラジルを含む数十ヶ国の約5,000万人が『PUBGモバイル』でチームを組み、ミッション達成に励んでいます。さまざまな面で世界最大のゲームプラットフォーム企業といえるテンセントゲームズの代表として感じるのは、今こそゲームデベロッパーがその使命を果たす時だということです。

利益を超越した影響力

当社が売り出す数多くの優れたゲームの人気と、そうしたゲームがもたらす利益に安座することもできるでしょう。ですが、それでは私たちが生きる世界をよりよいものにするための機会を無駄にすることになります。大きな目標や利他主義を掲げるスタートアップの創設者や重役は多いですが、真の魔法は行動と結果に宿るものだということは誰の目にも明らかです。

ゲーム業界はひとつのターニングポイントに到達しました。テンセントのように世界規模の熱心なユーザーを持つ企業には、多くの責任が伴います。テクノロジーの進化とプレイヤーエクスペリエンスの向上を牽引し続ける一方で、私たちはそうした進化をより広範な社会のニーズにも適用していかねばなりません。そしてグローバルコミュニティを念頭に置いた活動は、テンセント全社の経営理念である「Value for Users, Tech for Good(ユーザー本位、善のための技術)」とも合致しています。

私は音楽と文化を愛しています。つい先日、このふたつを推進・保護するためにゲームが果たしうる役割について改めて気づかされました。それは私の母国でもっとも人気のあるゲーム『王者栄耀(Honor of Kings)』が、中国の伝統芸術である越劇に着想を得た新しいインゲームスキンを製作した際のことです。悲しいことに、近年の越劇の公演への来場者数は減少しています。しかし、およそ8,000万人のプレイヤーがこのスキンを介して越劇とその登場人物たちに触れ、死にかけていると思われた芸術に新たな関心が集まっていることを知った時の驚きは、大変なものでした。

こうした動きを拡大するため、当社や革新的技術を生み出すクリエーターたちは現実的な課題に対処していかなければならないと考えています。

メディアとしての力

ひとつの例として、ビデオゲームとテクノロジーを使った教育の成果向上があります。2018年より、テンセントは学習ゲームへの取り組みを本格的に開始し、ユーザーが自分のペースで楽しくタイピングや幾何学を学べるゲームを公開しました。その1年後には、視覚的障害を持つ方が遊べるゲームや、視覚に問題のない方が視覚を阻まれた状態で世界を体験できるゲームを開発し、当社の技術力を披露しました。

そして昨年耳にした、MindMaze Healthcare社が脳卒中患者の脳の修復を目的とするゲーム『MindPod』を開発したというニュースには胸が躍りました。これは動作検知カメラが脳卒中患者の腕の動きを追跡し、床から天井まで広がるスクリーンに映し出されたイルカを誘導して魚を捕まえるゲームです。この動作がプレイヤーの脳に「揺さぶり」をかけ、身体の可動性をいくらか取り戻すことができるとされています。これは机上の空論ではなく、実際にイギリスのロイヤル・バッキンガムシャー病院で使用されているものです。

ゲームプラットフォームのトップ企業としての当社の責任には、あらゆる人々の健康な環境を確保することも含まれており、特に若年層のプレイヤーを重視しています。こうした活動の一環としてテンセントは、子どもや思春期の若者により安全なインターネット環境を提供することを目的とした #WePROTECT Global Alliance などのプログラムに参画しています。

ハードウェア、ソフトウェア、接続性、プログラミング等々のテクノロジーが、ゲームの遊び方や他者との関わり方を根本的に変えた事実は驚嘆すべきことです。一方で、ゲームはテクノロジーだけではないことも心に留めておくべきでしょう。

デジタルとリアルの融合

これはメタバースと、それがテンセントおよびゲーム業界全体にとって何を意味するかに繋がります。テンセントにとってメタバースとは、現在と未来において「ハイパーデジタルリアリティ」と呼ばれるものの数ある形のひとつに過ぎません。実際、先述したゲーム技術の中には、当社やその他の企業がすでに着手しているリアルとバーチャルの統合への試みも含まれています。

こうしたブレンデッド・エクスペリエンス(デジタルとリアルの融合)はeスポーツにおいて見られます。世界中のアリーナがデジタルスポーツをプレイするチームに声援を送るファンで埋め尽くされ、さらに多数の観客がリモートでライブストリームを視聴し、オンラインチャットやソーシャルプラットフォームで交流しています。そしてライブパフォーマンスに非常に厳しい制限が課されていた昨年には、『フォートナイト』のプレイヤー数千万人がアリアナ・グランデのインタラクティブなゲーム内音楽ツアーに招待されましたが、これもEpic Gamesによる最新のハイパーデジタルリアリティの実演といえます。

一部のパイオニア企業は、そのビジョンを実現するために専用のメタバースを開発し、コンテンツとオーディエンスを予め造られたデジタル環境へ移動させ始めています。当社のアプローチはこれとは異なります。当社はテクノロジー企業です。しかしよくよく見てみれば、その核はコンテンツとエクスペリエンスを重視する企業であることがわかります。私たちはテクノロジーを使って優れたコンテンツの限界を押し広げ、社会のために新たなエクスペリエンスを実現・創造することを信条としているのです。

申し上げたいのは、メタバースの時代はいずれ来るということです。それは今日ではありませんが、コンテンツとユーザーエクスペリエンスから目を離さないでください。プラットフォームやそこへアクセスする手段に囚われてはいけません。現在私たちが目にしている技術は、ほんの数年前の技術とは確かに雲泥の差です。しかし、こうした技術は未だに原始的かつ実験的でもあります。そしてテクノロジーの推進力に影響され、今後も急速に変化し、向上していくでしょう。あらゆるデジタルプラットフォームとハードウェアが、この40年間でそうなっていったように。

ゲームの未来について、正確なことはわかりません。しかしVRヘッドセットのトラブルや画像のコマ落ち、あるいはフリーズが技術の未熟さを示していることはわかります。そして技術、エクスペリエンス、その他の面で私たちはすでに大きな進化を遂げてはいますが、最高のゲーム内コンテンツ、エクスペリエンス、テクノロジーは未だに実現していないという確信こそが、私の胸を躍らせるのです。

STEVEN MAについて

テンセントのシニアバイスプレジデントであるSteven Ma氏は、ライセンスゲームの販売およびオペレーション、QQゲームプラットフォーム、QTalk、バックエンド研究開発に加え、テンセントゲームズのグローバル事業開発および投資イニシアチブを統括しています。

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